社長最後のお仕事

この10年、雑誌の衰退とともに仕事量は減り、いや量だけでなく単価も下がるという二重苦を強いられていました。大手出版社と広告代理店が主な仕事の窓口だった小社にとって、オウンドメディアなど企業から直接仕事を受注するのは非常に難しいという現実に直面していたわけです(オウンドメディアなどが世に多く出始めていますが、大企業が依頼する先はやはり大手出版社や大手代理店)。
一方、IT系企業からのコンテンツ制作の話が少しずつですが来始めていたため、「もう少し耐えればボトムを脱出できるかもしれない」という期待もありました。しかし、大きなレギュラーがなくなり、これ以上の延命は傷口を大きくしかねないというところまで切迫した状態であるのも事実。
そんなとき、確か2016年の6月頃だったか、封書でM&Aの案内が届きました。最初は「うちみたいな小さな会社にM&Aなど相手にされるわけがない・・・」などと思っていました。でも余裕もなかったのでダメ元での気持ちで連絡してみたのです。

MAのマネジメント会社では企画制作会社をまさに捜していたところでした。話を聞いてみると中堅どころの出版社は他の業種の傘下に入るところが多いということでしたが、現在の出版社は制作を我々のような制作会社に外注するところが多く、出版社は制作会社を傘下に(孫会会社に)欲しがっているのかもしれません。実際に出版社へも面談に行きましたが、出版業界の実情を知る身としては、できれば他業種の企業の下で制作に携わることを望んでいました。

そんなとき制作部門を欲しがっている印刷会社がある、という話が舞い込んできました。印刷会社も出版社同様に斜陽産業と思われていますが、地方に拠点を置くその会社(*)はいくつもの企業をM&Aする勢いある会社だと知り、小社の弱点である営業部門を補ってもらえれば企業の印刷物などを受注できる可能性も・・・と期待が膨らみました。
何度か面談をし、具体的な話になるまで数か月かかりましたが、最終的にグループ傘下に入れてもらえることになったしだいです。

私自身は引き継ぎ期間を経て代表を退き、社員の中から代表になる者を選出するというのが条件でした。発足以来30年近くやってきた会社です、未練がないと言ったら嘘になりますが、このままあてもなく続けるより安定した親会社の下で再出発する方が、社員にとっては遥かにいいと判断したわけです。しかし、社員から見ればいくら経済力があり安定していてもどんな会社かわからないところに売り飛ばされるのか、と思う人もいるかもしれません。社員一人一人と面談し、色々話をしました。そして、全員納得してもらった末、契約書を交わしました。
今まで残ってくれた社員には、安い給料で耐えてくれたことへの感謝と、会社を再生し、いい思いをさせてやれずに申し訳ないという気持ちでいっぱいです。そして新しいSJPでは、今まで予算がなくてできなかったような企画を実現し、引退した私が将来SJPのファウンダーだったことを誇りに思えるような会社にしてほしいと願っています。

ということで2017630日をもって私、廣瀬真一は株式会社エスジェイピーの代表を退き、久米憲一が新しい代表となります。最後になりましたが、この場をお借りして、今までお世話になりました関係各位に深くお礼申し上げたいと思います。そしてまた、今後とも新生SJPを宜しくお願いいたします。

PS:それと新生SJPの誕生と同時に会社のHPを刷新しています。廣瀬が辞めた途端、HPがカッコ良くなります。でもこのHPのプロデュースこそ廣瀬最後の仕事となりましたので誤解のないように(W)。
                                
(*)会社概要にて広真印刷社グループのリンクあります。

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