紙とデジタルのスピード感の違いとは?

紙媒体の制作に携わってきた時間が長かったためか、ウェブ制作の感覚とはどうしてもギャップがあります。たとえば紙で何かを表現する場合、企画して取材や撮影をし、デザインを起こしてコピーを書き、文字校正してから色校正。その後印刷となるわけです。そして一度印刷してしまったら修正ができない。ここがウェブと決定的に違うところです。ウェブの場合、もちろん間違いがあってもいいとは言いませんが、間違えても後から修正ができる。作り手の感覚としては、絶対に間違いが許されない状況で進めるのと、万が一間違えたらすぐ直します的な感覚で進めるのでは、スピードも違ってきます。<br /><br />最近うちに入ったウェブデザイナーは、まだ20代の若い女性ですが、「こんな感じでお願い」という僕のアバウトな依頼に対し、「何パターンか作っておいたので選んでください。直しが必要なら言ってください、直ぐ修正します」という答えとともに仕上がってきます。ウェブデザインの世界はこうなのでしょう。正直、このスピード感はとても気持ちいい。

同じデザインでも紙の場合、印刷してしまったが最後、直せないのだから、どうしても慎重に構えてしまいます。メディアの違いからなのか、時代が違うからなのかはわかりませんが、デフレのご時世に安い制作費で以前のやり方を踏襲していては、仕事にならないのも事実。そして、クオリティを落とさずに時間を短縮するのは、難しいでしょう。紙の印刷の世界でさえ「ネットでいんさ~つ、プリントパ○○などと安さとスピードをアピールする会社が多くありますが、色校正で「ここの部分の赤み抑えて、くすみ取る」なんて指示をしたらどうなるのでしょうか? おそらく「それはデータ上で修正してから入稿し直してください」となるのでしょう。それ以前に発注者側が「そんな色こだわっても仕方ないので、それでいいですよ」となる可能性もありますね(笑)

そんな状況の中で電子書籍はどうでしょうか。昨年末(2012年)のAmazon kindlに続き、先日(2013.年3月)、ibookstore が満を持して日本で販売開始となりましたが、「電子書籍元年」と騒がれた数年前より、この巨大企業2社が加わることでやっとインフラが整いこれからが本番といった感じです。我々極小出版社を含め、個人レベルでの出版ができることになったわけですから、こうなるともう電子書籍とブログの境界も怪しくなるほど、手軽に本を作れてしまいます。もちろん紙と違い、修正(バージョンアップ)も簡単にできるわけです。今やインターネットを百科事典代わりに使う人が多い時代、wikipediaに代表されるように間違いを修正するに留まらず、時代、いや時間と共に中身が変化、成長するコンテンツがこれからの本に要求されるのではないでしょうか。そして当然作り手もスピード感を身に付けなくてはならないでしょう。

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